浄化の塔の魔術師の皆さん、ごきげんよう!皆さんお待ちかねのキャスラー新聞!今日は昨日あったベネルクス第277回卒業式!その中でも話題となったジェニス・カーターの祝辞について紹介したいと思います。
大魔術師ジェニス・カーターが、ベネルクスの卒業式において壇上に上がったことは実に意外でした。ジェニスが自己紹介すると、彼女を初めて見た卒業生たちとその父母たち、そして新任の教授たちまでもが歓声を上げました。
「古い友人たちに会いに来ただけなのですが、どういうわけかこの場に立つことになってしまいました」
彼女も自分が卒業式で祝辞を述べることになるとは思っていなかったようです。信頼できる情報網によると、ジェニスは総長テリアンヌ・ポート教授の頼みで卒業式当日に突然祝辞を頼まれたそうです。著名な二人の魔術師が親友であることは誰もが知る事実です!
それでは、ジェニス・カーターの卒業式の祝辞全文を公開したいと思います!
-ベネルクス第277回卒業式祝辞全文-
「この場に立ってどんな話をするか悩んでいたのですが、ふと自分自身のことを顧みる機会になりました。明敏、優秀、根性…ベネルクス在学当時、周囲の人々が私のことを評価する際に言っていた言葉です。ああ、でも担当の教授だけは違いましたね。
ベネルクスの厳格なる卒業試験を通過した皆さんもまた、同じだと思います。しかし私は卒業して何年か経って見習い教授となった後でも、自分自身がハーベスターよりも役に立たない存在のように思えました。なぜだと思いますか?
それは私が何の選択もしなかったからです。私は与えられた人生を生きているだけで、その人生を生きている<ジェニス>は存在しなかったのです」
「私が本当に関心を持っていたのは、人々の謎の死や繰り返される失踪事件…そこに残された怪しい魔力の痕跡の調査でした。しかしそこまでです。問題をしっかり調査するためにはベネルクスの中に留まるわけにはいきませんでした。
ある日、未解決事件を解決できない自分自身に無力さを感じました。到底我慢できないほどに。
何日も部屋にこもって私を悩ませる問題と向き合いました。それまで私は自分が何を望んでいて、何を考えているのかが大事だと思っていましたが、それは間違いでした。重要なのは何をするかだったのです。
それに気付いてからやっと私は「選択」をし、多くのものを諦めたままベネルクスを去りました。そして自分なりのやり方を見つけ、世界中を巡って魔力の不均衡と混沌、災害を防ごうとしました」
「ここまでが今日お話しようと思っていた話です。私の話の中で、皆さんにお伝えしたいことはただ一つです。考えるだけで何もしなければ何も変わらない。心の声に耳を傾け、選択の時に気付いてください。そして選択するのです。
もし皆さんに余裕があるのなら、選択の時に一つだけ考慮してください。皆さんの才能は皆さんの友人、仲間、隣人たちを助けるために使われてこそ意味があるということを。皆さんの選択が共に暮らす世界のバランスを正しくするために使われるのなら、それはこの上ないことです。
皆さんが飽きてしまう前に話を終わらせてもらいますね。卒業おめでとうございます」
実にジェニス・カーターらしい祝辞でしたね!上気した顔で彼女の演説を聞いてた聴衆たちは、彼女の演説が終わると大きな拍手をおくりました。この様子を見ていたベネルクスの総長、テリアンヌは感極まった表情で涙を浮かべていました!
今回の卒業式が終わった後、ある卒業生は「今日は生ける伝説、ジェニス・カーターに会えて感無量です」と話していました。またある卒業生は「前々からジェニス・カーターを尊敬していましたが、祝辞が短くてより好きになりました」だそうです。最後に、ある学校関係者は「次はこの場で彼女の息子であるクレイの祝辞も聞きたいですね」と話しており、カーター親子に対する愛情を示していました。
こうしてベネルクス第277回卒業式は成功裏に終わりました。はるばるキャスラーまで来て取材を依頼してくださった浄化の塔の魔術師協会の皆さんに感謝申し上げます。
では皆さんのキャスラー新聞!また次の特集でお会いしましょう~!