2月15日
明日はトゥラーネ村で大魔術師ヘイル・ベルペウス様の追悼式が行われる予定だ。
普段からあの方を尊敬してた僕と兄のミライルは、追悼式に参列するために三日前から村に滞在している。
トゥラーネ村は噂に聞いていた通り、魔術師のための品々であふれていた。
さすが魔術の商業都市と呼ばれるだけのことはある。
夜には兄と一緒に魔術書店に行くことにしたが、追悼式に参列するために来ておいてはしゃいでしまっている自分が少し恥ずかしい。
まあでもせっかく来たのだし、思う存分見物していこう!
2月18日
気が動転して混乱している。
これは一体どういうことなんだ…未だに夢なのか現実なのかハッキリしない。
たしか僕はヘイル様の追悼式に参列していたはずなのに、気がつくと瓦礫に埋もれていた。
唯一思い出せるのは僕の方へと向かってきていた巨大なオーク…そして魔術で僕をはじき飛ばした兄の右手だけだ。
僕を助けてくれた魔術師たちの話によれば、トゥラーネ村は闇術師たちの襲撃に遭ったそうだ。
兄は…どうなったのだろうか?
2月20日
すっかり気力を失ってしばらく何も手につかなかった。
数日間兄の名を呼んで泣き叫んだが、僕の叫びに答えてくれる人はいなかった。
兄は危険な状況で僕を助けてくれたのに…
僕は兄のために何もしてやれなかったことに絶望した。
いや、まだ僕にもできることがあるはずだ。
まずは…兄を探そう。
廃墟となったトゥラーネ村に戻れば、きっと兄の痕跡だけでも見つかるはずだ。
2月27日
瓦礫の下敷きになって動かなかった両脚がやっと動くようになって、僕はすぐさま兄を捜しにトゥラーネ村へと向かった。
何人かの魔術師に止められたが、兄を諦めるわけにはいかなかった。
トゥラーネ村は未だに終わらない戦争によって焼け野原になっていた。
僕はその混乱のさなかに飛び込み、兄の痕跡を探し始めた。
しかし村に残ったのは死体の悪臭だけ…
兄は生きているだろうか?
2月28日
ついに兄を見つけた。
いや…あれを…兄と呼んでいいのだろうか?
兄は人の言葉ではない言葉をブツブツとつぶやきながら荒れ果てた廃墟をさまよっていた。
僕はそんな兄の手を握ることもできず逃げ出してしまった。
だってあれは僕の兄じゃないから!
そうだ…兄は…
僕を瓦礫の下に隠してトゥラーネ村から逃げたんだ…!