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ストーンガルド城が陥落した日
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タイプ: 収集
カテゴリー: ストーンガルド城周辺

ストーンガルド城が陥落した日 1

特に大粒の雨が降る夜だった。バケツをひっくり返したような雨だった。大きな音が聞こえて窓の外を見ると、村の大人たちが大声をあげて城門に向かって走って行っていた。

父さんはヴィエンタに行って明日にならないと帰ってこない。家には僕一人だけだったから、急に怖くなった。何となしに扉を開けて通りの様子をそっと見ていたら、見慣れた隣家のお嬢さんが見えた。僕はお嬢さんを追って通りに出た。

雨のせいで前が見えなかった。気がつくと知らない人たちに混じってどこかへ押し流されていた。ふと顔を上げると巨大な城が目の前にあった。寒さと恐怖で震えていると誰かが僕のベルトを引っ張った。いつも僕の面倒を見てくれていたイドゥン兄さんだった。

兄さんは怖い顔をして怒っていたが、うるさすぎてよく聞こえなかった。僕はもみくちゃにされながら下水道の入口まで連れて行かれた。兄さんは僕に下水道に入るように言った。僕は泣きながら頼んだが兄さんは知らん顔だった。

いつしか雨は止んでいたけど、下水道へと下りる階段にはまだ雨水が残っていた。兄さんはとまどう僕の尻を容赦なく蹴った。冷たい水のせいで全身が凍り付くようだったけど、兄さんが怖くて戻れなかった。

ゆっくりと壁を伝って歩いていくと、錆びた鉄格子がぼんやりと見えた。どうしようかと悩んでいると、鉄がぶつかる鋭い音がした。剣がぶつかり合う音だった。その時やっと僕は何が起きているのか気付いた。アーキウム軍が城門を破って攻め入ってきたのだ。アーキウムは人を食うという父さんの話を思い出した。僕はうろたえながら鉄格子の間に身体を押し込んだ。

下水道の外に出ると、見渡す限り赤かった。城から吹き出す火の手が住宅街の壁に反射していた。イドゥン兄さんが心配だったが、足が全然動かなかった。やっと我に返った時には、城の外へと飛び出していた。僕は声をあげて泣き、煙の中を走った。

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追加者 Kiriak (6-10-2024)